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前橋地方裁判所 平成9年(ワ)236号 判決 1998年5月21日

原告

佐久間奥雄

ほか一名

被告

飯島雄司

ほか一名

主文

一  被告らは各自、原告らそれぞれに対し、各金一〇七三万八二九四円及びこれに対する平成八年四月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生(以下「本件事故」という。)

(一) 発生日時 平成八年四月二五日午後二時三八分ころ

(二) 発生場所 群馬県富岡市字田四二二番地先路上

(三) 加害車両 大型貨物自動車(群馬一一て六七七。以下「加害車」という。)

右運転者 被告飯島雄司(以下「被告飯島」という。)

(四) 被害者 訴外亡佐久間祐太(平成二年三月二五日生。以下「祐太」という。)

(五) 態様・結果 祐太が、前記日時・場所において、交通整理の行われていない横断歩道を子供用自転車を押して横断し始めたところ、折から祐太の右方向から進行してきた被告飯島の運転する加害車が祐太に衝突し、その結果、祐太は前記同日午後三時五分ころ、頭蓋底骨折、全身打撲傷により死亡した。

2  原告らの地位

原告らは、祐太の父母であって、他に相続人はいないので、それぞれ祐太の死亡にともない、祐太の被告らに対する損害賠償請求権をその法定相続分である二分の一の割合で相続した。

3  責任原因

(一) 被告飯島は、その進行道路が時速四〇キロメートルの制限をされ、事故現場が交通整理の行われていない交差点で、かつ横断歩道が設けられていたのであるから、このような場合には、常に前方を注視し、規制速度を遵守した上、横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前で停止できるような速度で進行しなければならず、横断中又は横断しようとする歩行者があるときは当該横断歩道の直前で一時停止し、かつその通行を妨げないようにしなければならない注意業務があった。

にもかかわらず被告飯島はこれらを怠り、前方を注視せず、かつ規制速度を二〇キロ毎時以上超過し、横断歩道の直前で停止できるように減速することなく、横断歩道を横断しようとする祐太がいたのに一時停止することもなく進行した過失によって本件事故を発生させたものであるから、民法第七〇九条に基づき本件事故により祐太及び原告らが被った損害を賠償すべき義務がある。

(二) 被告小暮三喜男(以下「被告小暮」という。)は、被告飯島の使用者であり、被告飯島は被告小暮の業務に従事中に本件事故を起こしたのであるから、民法第七一五条一項に基づき、本件事故によって祐太及び原告らが被った損害を賠償すべき義務がある。

また、被告小暮は、加害車の保有者であって、加害車を自己のために運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法第三条に基づき、本件事故によって祐太及び原告らが被った損害を賠償すべき義務がある。

4  損害

本件事故により祐太及び原告らが被った損害は、以下のとおりである。

(一) 治療費 一万四八一〇円

祐太は、本件事故により、群馬県富岡市富岡二〇七三―一公立徳岡総合病院において治療を受け、右治療費として右金員を要した。

(二) 葬儀費用 一二〇万円

祐太の葬儀費用は少なくとも一二〇万円を要した。

(三) 逸失利益 二八三二万六五八八円

祐太は、本件事故当時六歳の男子であったから、少なくとも一八歳から六七歳まで平成七年度賃金センサス男子学歴計平均年収五五九万九八〇〇円を得られたものであり、生活費控除率を五割として、ライプニッツ式計算法により中間利息を控除して計算すれば、逸失利益は次のとおりとなる。

五五九万九八〇〇円×(一-〇・五)×(一八・九八〇二-八・八六三二)=二八三二万六五八八円

(四) 慰謝料 二〇〇〇万円

祐太は本件事故により、六歳の若さで両親を残して死亡せざるをえなかった。また、原告らも長男である祐太の将来を楽しみにしていたにもかかわらず本件事故により祐太を失ったものであり、右三名の精神的苦痛を慰謝するに合計二〇〇〇万円を下ることはない。

(五) 文書料 三六八〇円

本件事故による損害賠償請求等のための証明書等の作成費用として右記の費用を要した。

(六) 以上祐太及び原告らの損害の合計額 四九五四万五〇七八円

5  損害の充当 三〇〇一万八四九〇円

原告らは、前記のとおり祐太の損害賠償債権を各二分の一の割合で相続し、また、右損害金の弁済として、加害車の契約する自賠責保険会社より三〇〇〇万三六八〇円、及び任意保険会社より一万四八一〇円の各支払いを受けた。

6  従って、原告らの損害金残金は一九五二万六五八八円、原告ら各自分は九七六万三二九四円となる。

7  弁護士費用 一九五万円

原告らは、被告ら(任意保険会社)に損害金の任意支払いを請求したが、支払いを得られず已むなく本訴提起に至ったものであり、その弁護士費用としては合計一九五万円(原告各々につき九七万五〇〇〇円)が相当である。

8  よって、原告らそれぞれは、被告ら各自に対し、不法行為に基づく損害賠償として一〇七三万八二九四円及びこれに対する不法行為の日である平成八年四月二五日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1(事故)、(一)ないし(四)、同(五)の内、祐太が自転車を押して横断し始めたとの点を除く事実及び同2(原告らの地位)の事実は認める。

本件事故は、祐太が横断歩道の設置された優先道路に、交差道路から自転車に乗ったまま飛び出して発生したものである。

同3(責任原因)(一)(被告飯島関係)の事実は否認する。

同3(二)(被告小暮関係)の事実は、使用関係及び業務中の事故であることは認め、その余は否認する。

同4(損害)(一)(治療費)の事実は認める。

同4(二)(葬儀費用)、(三)(逸失利益)の事実は不知。

同4(四)(慰謝料)の事実は否認する。

同4(五)(文書料)の事実は不知。

同4(六)(合計)の事実は否認する。

同5(損害の充当)の事実は認める。

同6(損害残金)の事実は否認する。

同7(弁護士費用)の事実は不知。

三  抗弁(過失相殺)

被告飯島の運転する加害車が走行していた道路は、それと交差する脇道に比し、明らかに広い道路であり、かつ、中央線が設けられており優先道路であるから、これと交差する道路から進入する車両は、優先道路を進行する車両の進行を妨害してはならないところ、祐太は自転車を運転して右脇道から加害車の進行方向直前に飛び出して本件事故に至った。従って、少なくとも祐太の過失を四〇パーセント斟酌すべきである。

四  抗弁に対する認否

加害車の走行車線が、交差する道路に比し明らかに広い道路であることは認めるが、その余は否認する。

祐太は、横断歩道上を自転車を押して横断し始めた直後に加害車に衝突されたものであり、同人が六歳であったことを考えると過失相殺すべきでない。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1(事故)、(一)ないし(四)、同(五)の内、祐太が自転車が押して横断し始めたとの点を除く事実及び同2(原告らの地位)の事実は当事者間に争いがない。

二  請求原因3(責任原因)及び抗弁(過失相殺)

1  事故態様

(一)  まず、責任原因及び過失相殺の判断の前提となる本件事故態様につき争いがあるので、この点について検討する。

被告飯島が加害車の運転手であったこと、祐太が交通整理の行われていない横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)を横断しようとして右方向から進行してきた加害車と衝突したことは当事者間に争いない。

原告らは、祐太が自転車を押して横断し始めた直後に加害車に衝突されたと主張し、被告らは、脇道から優先道路に自転車を運転して飛び出したと主張する。

(二)  成立に争いのない乙第一号証、第三号証、第五ないし第八号証、第一〇号証、第一二、一三号証、証人神宮入江の証言及び弁論の全趣旨によれば、本件事故現場及び事故に至る加害車の状況は、左記のとおりであると認められる。

(1) 本件事故現場付近の概略は別紙図面のとおりであるところ、加害車が走行していた道路は主要地方道富岡・妙義線(以下「本件道路」という。)であり、本件事故現場付近は、直線、平坦で、アスファルト舗装がされ、最高速度四〇キロメートル毎時、はみ出し禁止の交通規制がされている他、本件横断歩道についてはこれを示す道路標識がされ、その手前に停止線、衝突地点から約九・五メートル手前に横断歩道標識がある。

本件道路は、片側一車線で、加害車が走行していた車線の幅員は約二・八メートル、対向車線の幅員は約二・七メートルであり、左側に幅員約〇・五メートルの路側帯(舗装されていない)と幅員約一メートルの無蓋側溝があり、右側には幅員約一メートルの路側帯(舗装されている)と幅員約〇・六メートルの有蓋側溝がある。

そして、本件横断歩道の左方には、入口幅員約三・四メートルでその後の幅員約二・三メートル、右方には入口幅員約五・四メートルでその後の幅員約二・七メートルの細い道路があるが、本件道路には中央線が設けられて優先道路であることが示されていた。

(2) 事故当時、天候は晴れで、本件道路には運転に支障を来す障害物もなく、加害車前方の見通しはよかったが、交差道路の左方手前はブロツク塀、右方手前は生け垣があっていずれも左右の見通しが悪かった。

(3) 被告飯島は、事故当時、事故の車線を逸脱することなく進行していたが、日頃、本件道路を仕事で通っているので、本件横断歩道があることを事故以前から知っており、本件事故当時も衝突地点の手前約七〇メートルの地点で前方に本件横断歩道があることを認識し、減速したものの、漫然と時速六〇キロメートルで進行した(なお、被告飯島は、衝突地点から約一七メートル進行した地点でバックミラーにより本件事故に気付いて急制動し、更に約二九メートル離れた地点で停車したものであって、同事実は時速六〇キロメートル程度であったことと符合し、被告飯島が時速六〇キロメートルを越える速度で進行したと認めるに足りる証拠はない。)。

(4) 被告飯島は、事故後の実況見分に際して、本件事故の衝突地点から一六・五メートル手前の地点で、衝突地点の左側二メートルの位置の自転車に乗った人間の姿が確認できた。

しかるに、被告飯島は、事故前に祐太と自転車の有無を確認することなく、本件横断歩道を通過し、その際自己の運転する加害車左側にコクンと何か物が当たったような音がしたため、本件横断歩道から約一七メートル通り過ぎた地点で左側のバックミラーを見たところ、左後輪の脇に転がっていく自転車の姿を確認して初めて自転車と衝突したことを認識し、急制動して停車した。

そして、事故現場に戻り、祐太が衝突地点から四メートル離れた右側の前記無蓋側溝の中に倒れ、自転車は衝突地点から約二・五メートル離れた右側交差道路の右側道上に倒れているのを発見した。

(5) 祐太の乗っていた自転車は、高さ約〇・五メートル、長さ約一・二メートル(乙第一号証によるが、右高さについては、六歳で身長一・二メートル(乙第一二号証による。)の男の子が乗車するものとしては、低すぎるようにも思え、乙第一号証添付の写真による高さと長さの比率からすれば、高さ約〇・七メートルと推測できる。)であるところ、事故後の警察官による実況見分に際しては、前輪が右に湾曲している以外には大きな損傷はなく、前部に取り付けられた籠もハンドルも特段の損傷はなかった。

右実況見分や警察官による取り調べ(乙第七号証)等に際しての加害車の状況は、前輪左タイヤに真新しい擦過痕、車両左側面(前輪と後輪の間)の巻き込み防止用サイドバンパーにも真新しい擦過痕(一メートル前後にわたって横に長く付けられた一本の筋状のもの。)、後輪左タイヤにも真新しい擦過痕があったが、外には真新しい痕跡は見当たらず、加害車前輪左タイヤの痕跡は自転車の前輪との接触によるもので、サイドバンパーの痕跡は自転車のハンドル部分に接触したもの、後輪左タイヤの痕跡は自転車の前輪を押し潰したものと推定され、被告飯島もその旨指示し、供述した。

また、祐太の怪我の状態は、頭頂部、額部、後頭部及び下顎部に骨折、右眉部分に擦過傷、右耳介部、右外側前腕部及び右手背部に打撲傷があり、死因は頭蓋底骨折とされた。

(三)  右(一)、(二)に判示の事実によれば、祐太が本件横断歩道を渡ろうとして、自転車と共に加害車に跳ね飛ばされて、頭蓋底骨折等の傷害を受けて死亡したことは明らかであるが、双方の主張の食い違う事故態様、すなわち自転車を押して横断していたものか、自転車に乗って飛び出したものかについては、なお慎重な検討を要する。

(1) 目撃者とされる証人神宮入江(甲第三号証も同旨)も、事故直後の状況を目撃したものの、直前の祐太の状況は見ておらず、事故後の状況から推測して供述するもので、事故前の状況の認定の資料とすることはできない。

確かに成立に争いのない乙第九号証及び原告佐久間奥雄本人尋問の結果によれば、祐太は日頃、両親から交通の安全について注意を受け、自転車の時は横断歩道手前で降り、よく確認をして自転車を押して渡るようにと教えられていたので、祐太が本件事故当時、本件横断歩道の手前で自転車から降りていた可能性は否定できない。

しかし、祐太は、本件事故直前に事故現場付近路上で一人で自転車に乗っており、友人から一年生は自転車に乗ってはいけない旨注意されたものであり(成立に争いのない乙第一一号証により認める。)、また同人が小学校一年生になったばかりで判断能力が十分とは言い難く、両親が注意した通りに行動できるとは限らないし、実際、乙第九号証によれば、日頃母親から県道(本件道路)は危ないから渡らないようにという注意を受けながらも、本件事故当日に本件道路を横断しようとしていたものであることからすれば、本件事故当時、祐太が自転車から降りず、自転車に乗ったまま本件道路を横断しようとした可能性もまた否定できない。

結局祐太が本件事故当時に自転車を押していたか乗車して飛びだしたかについていずれの事実もこれを認定するに足りる的確な証拠がないと言わざるをえない。

(2) 前記認定の、<1>自転車の破損状況(前輪が大きく湾曲した以外に特段の破損がないこと)、<2>加害車の衝突の痕跡の状況(左前輪、左サイドバンパー及び左後輪に擦過痕)、<3>被告飯島の感じた衝突の衝撃はコクンという程度だったこと、<4>加害車が路側帯にはみ出して運転していたことはないこと、<5>祐太や自転車が飛ばされた距離はわずかであること等を考えると、本件事故は、祐太が横断しようとして自転車を路側帯から少しはみ出させる状態で停止していたところ、これに気付かなかった被告飯島が加害車の左前後輪、サイドバンパーに自転車のハンドルと前輪を接触させ、祐太を無蓋側溝内に、自転車を交差道路付近に飛ばしたものと推定するのが自然である。

(3) 原告らは、祐太が自転車を押して横断し始めたもの、即ち横断中であったと主張するが、自転車が加害車の左側面に衝突していることを示す前記各車両の衝突痕からすると、祐太は加害車が時速六〇キロメートルで進行してくるところをこれに突っ込む形で横断を開始したことになり、六歳の子どもの行動にしても極めて不自然である。

また、被告らは、自転車に乗車して飛び出したとするが、もしその主張どおりであれば、自転車と加害車の衝突痕は相当程度なものが残ることが推測されるし、加害車に祐太の身体の接触痕ができることが予想されるところ、前記認定のとおり、自転車と加害車の衝突痕は軽微であり、加害車に祐太の身体の接触痕がみられず、被告ら主張の事故態様も証拠と矛盾し採用できない。確かに祐太は頭部に数カ所の骨折をしているものであるが、これは無蓋側溝まで飛ばされた際にできたものとの推測もでき、被告らの主張を裏付けるとは言い難い。

2  被告飯島の責任

右1の事実によれば、被告飯島は、規制速度を遵守して運転する注意義務があるのに、これを怠り、漫然時速六〇キロメートルで進行した過失により、また、左右前方を注視し、本件のような交通整理の行われていない横断歩道に接近する場合には、横断しようとする歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前で停止できるような低速度で進行しなければならないし、横断歩道を横断中又は横断しようとする歩行者又は自転車があるときは当該横断歩道ないしその停止線の直前で一時停止し、かつその通行を妨げないようにしなければならない義務があるのに、これらを怠り、左右前方を注視せず、横断しようとする祐太及び祐太の自転車に気がつかず停止することなく進行した過失により、本件事故を惹起させたものと認められるから、被告飯島に過失があり、民法七〇九条に基づき本件事故により祐太及び原告らが被った損害を賠償すべき責任がある。

3  被告小暮関係

被告小暮が被告飯島の使用者であること及び本件事故が業務中の事故であることは当事者間に争いなく、前記のとおり被用者である被告飯島の過失が認められる以上、被告小暮は、民法七一五条一項に基づき、本件事故によって祐太及び原告らが被った損害を賠償すべき責任がある。

4  過失相殺

既に判示のように、本件道路は、交差する道路に比して明らかに広い道路であり、かつ優先道路であるが、本件事故現場は横断歩道上であり、祐太は本件横断歩道を渡ろうとして自転車の前輪部分を路側帯からはみ出させる状態で停止していたところに、加害車が衝突したものである。

確かに、右祐太の停止状態は適切さを欠くものではあったとは言えよう。

しかし、<1>祐太がわすが六歳であったこと、<2>祐太の乗っていた自転車は子供用のものであり、道路交通法上車両と見ることは困難であること(同法二条一項八号、一一号、一一号の二参照)、<3>本件事故現場は横断歩道上であること、<4>被告飯島は横断歩道の存在に気付いていながら、横断する歩行者や自転車はないだろうと安易に軽信し、横断しようとする歩行者や自転車の有無の確認も減速もせず、規制速度を時速二〇キロメートルも超えたまま本件横断歩道を通過したものであること、<5>被告飯島が左方に注意を払っていれば、遅くとも本件事故衝突地点から一六・五メートル手前の地点で、祐太を容易に発見できる道路状態であったものであったこと等の事実を総合考慮すると、祐太の前記停止状態を捉えて、過失相殺しなければ公平に反するほどの落ち度があったと見ることは相当でない。

三  損害

1  治療費 一万四八一〇円

右事実は当事者間に争いがない。

2  葬儀費用 一二〇万円

原告佐久間奥雄本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、葬儀費用は原告らが支出しており、その費用は少なく見積もっても一三〇万円以上と認められるところ、本件事故と相当因果関係を有する葬儀費用は一二〇万円が相当である。

3  逸失利益 二八三二万六五八八円

甲第一号証、原告佐久間奥雄本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、祐太は、平成二年三月二五日生まれで、本件事故当時満六歳の健康な男子であったから、本件事故により死亡しなければ、満一八歳から六七歳までの四九年間、少なくとも平成七年度賃金センサス第一巻第一表男子労働者学歴計平均年収五五九万九八〇〇円の収入を得られたものと認められる。

そこで、右認定事実を基礎に、生活費控除率を五割とし、ライプニッツ方式により年五分の割合による中間利息を控除して逸失利益の現価を算定すると、原告主張のとおり二八三二万六五八八円となる。

4  慰謝料 二〇〇〇万円

本件事故の態様、原告佐久間奥雄本人尋問の結果によれば、祐太は小学校に入学したばかりでわずか六歳であったこと、原告らは、長男である祐太の将来を楽しみにしており、事故後、事故現場の近くに住むのがつらくて引越しまでしていること、その他諸般の事情を総合すると、原告らの慰謝料は相続分と固有分(原告ら同額と考えられる。)とを合わせて各一〇〇〇万円と認めるのが相当である。

5  文書料 三六八〇円

弁論の全趣旨により原告らが本件事故による損害賠償請求等のための証明書等の作成費用として右の文書料を要したことを認めることができる。

6  損害の合計額

以上によれば、原告らの損害の合計額は、祐太の相続分を含めて四九五四万五〇七八円となる。

7  損害の充当

請求原因5のとおり三〇〇一万八四九〇円が原告らの損害に充当された事実は当事者間に争いがない。そこで前記認定した損害の合計額に充当した結果の損害金残金は、合計一九五二万六五八八円となり、原告ら各自分は、九七六万三二九四円となる。

8  弁護士費用

原告らが、本件訴訟の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に委任したことは明らかであり、本件事案の内容、審理経過、認容額等に鑑み、弁護士費用の額は、原告各々につき九七万五〇〇〇円と認めるのが相当である。

9  損害総計

原告らそれぞれに付き一〇七三万八二九四円

四  結論

以上のとおりであるから、原告らについては、それぞれ被告ら各自に対し、右損害金及びこれに対する不法行為の日である平成八年四月二五日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の請求権を有することとなり、原告らの請求はいずれも理由がある。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 田村洋三)

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